〇再びプロ野球オリックスバファローズの話題ですが、オリックスの平野佳寿選手が10月2日の日本ハムファイターズ戦で9回に登場し、見事日米通算250セーブを達成し、名球会入りを果たしました。
〇平野佳寿投手ってどんな人?
平野佳寿(ひらの・よしひさ)(39歳)、今や押しも押されぬオリックスバファローズの守護神です。
平野さんは2005年に京都産業大学から大学社会人ドラフト希望枠でオリックスに入団されました。右投げ右打ちのベテラン選手です。
1年目から開幕先発ローテーション入りし、2006年は7勝、2007年が8勝と順調な滑り出しでしたが、2008年に開幕直前に右肘痛を発症し、軟骨除去手術を受けて、1年間リハビリに努めました。
2009年には1軍ローテーションに復帰しましたが、この年の勝ち星は3勝にとどまりました。
〇岡田監督の方針で中継ぎへ、大きく花開く
翌2010年にオリックス監督に就任した岡田彰布監督の方針で、先発から中継ぎへの転向を命じられ、一軍公式戦63試合の登板で防御率1.67、39ホールドポイントという好成績を残すとともに、パ・リーグの救援投手では最も多い101三振を奪いました。また、パ・リーグの監督推薦選手として、オールスターゲームへ4年ぶりに出場しました。
以降、2011年にはパ・リーグの最優秀中継ぎ投手賞を獲得し、中継ぎ、抑えとして活躍されます。
2017年には第4回ワールドベースボールクラシック(WBC)の日本代表選手に選出され、6試合を投げて7三振を奪います。この時の活躍が高く評価されたこともあり、2017年の秋にMLBから誘いがかかり、12月にアリゾナ・ダイヤモンドバックスと2年間の契約を結びます。
〇2018年にメジャーリーグへ
メジャーリーグでは2018年、2019年とダイヤモンドバックス、2020年にシアトル・マリナーズと3年にわたって活躍します。
2018年の成績は、通算75試合の登板で、4勝3敗、防御率2.44、ナショナル・リーグ3位の32ホールドを記録。オリックス時代のパ・リーグ公式戦におけるレギュラーシーズン自己最多登板記録(2011年の72試合)を上回ったばかりか、日本人メジャーリーガーとしてのレギュラーシーズン最多登板記録を達成するとともに、クローザーとして3セーブを挙げました。
翌年の2019年は5勝5敗1セーブ16ホールド、防御率4.75と前年の成績を下回りましたが、その一方で、5月30日の対ロッキーズ戦でMLB公式戦通算100試合登板を達成したほか、シーズン通算でも62試合に登板。この年で2年契約を満了したことから、契約時の条件に沿って、10月31日付でFAの対象選手になりました。
その翌年の2020年にはシアトルマリナーズに移籍し、メジャーリーグ3年目を迎えます。ただ、このころからアメリカでもコロナ禍が吹き荒れ、メジャーにおいても試合数や観客数も大きく減少します。その翌年の2021年においても平野選手はメジャーでの継続を望んでおられたようですが、メジャーでの市場が急に減少し、平野選手に対するオファーはどこの球団からもかかりませんでした。この時に日本への復帰を働きかけていたオリックスバファローズからのオファーを受け入れ、平野選手は再びオリックスバファローズのマウンドに立つことを決意するのです。
〇再び日本球界へ
2021年に平野さんは日本球界に帰ってきました。その際の記者会見でのコメントが印象的です。
2月10日に春季キャンプ地の宮崎市内で開かれた入団記者会見に「気合を込めた」という丸刈り頭で登場すると、契約期間が満了する2022年以降のMLB再挑戦を全く考えていないことを明言し、さらに、オリックスへの復帰に至った経緯も説明。
「オリックス(の球団関係者)には、MLBへ移ってからも、1年目から何かと気に掛けていただいた。『MLBで現役生活を続けたい』という気持ちはもちろんあったが、『オリックスへ戻るならこのタイミング』という気持ちへ変わりつつあったので、コロナ禍で厳しい状況のなか快く迎えてくれたことに感謝している。『(オリックスへの恩は)優勝でしか返せない』と思うので、身体がボロボロになるまで、オリックス優勝のために頑張りたい。そして、(自分のような30代後半の)『オジサン』が若い子(若手選手)へ負けないように頑張っているところを、日本のファンの皆さんに見てもらいたい」との抱負を述べたとのことです。
〇セ・パ交流戦で一軍のクローザーへ復帰すると、登板した6試合をすべて無失点で凌ぎながら4セーブを記録。レギュラーシーズン全体では、一軍公式戦46試合の登板で1勝3敗、29セーブ、3ホールド、防御率2.30を記録するとともに、オリックスとしては1996年以来25年ぶりのパ・リーグ優勝へ貢献しました。
ポストシーズンでは、ロッテとのCSファイナルステージ第2戦で9回表に登板すると、CSとしては2014年以来自身7年ぶりのセーブを記録。東京ヤクルトスワローズとの日本シリーズには、11月25日の第5戦(東京ドーム)9回裏と、同月27日の第6戦(ほっともっとフィールド神戸)延長10回表に登板しました。
日本シリーズでの登板はプロ16年目にして初めてでしたが、2試合とも1イニングを無失点に抑えていて、第5戦ではシリーズ初セーブを挙げています。
チームは第6戦で延長12回の末に日本シリーズ制覇を逃したものの、自身は12月16日に推定年俸2億円(前年から5000万円増)という条件で契約を更改。更改後の記者会見では、「(オリックスでもMLBでも)優勝したことがなかったので、『優勝する』という一番の目標を達成できただけでも、オリックスに帰ってきて良かった」と述懐しました。
〇2022年には、4月26日の対日本ハム戦(東京ドーム)でリーグトップ(7個目)のセーブを挙げたことによって、NPB/MLB公式戦での通算セーブ数が200に達しました。
日本人の投手としては6人目の記録ですが、NPBからMLBを経てNPBへの復帰後に到達した投手は平野が初めてです。
さらに、6月2日の対DeNA戦(横浜)で、NPB史上7人目の一軍公式戦通算200セーブを史上最年長の38歳2ヶ月で達成しました。
チームは前年に続いてCSファイナルステージの突破を経てヤクルトとの日本シリーズに臨んだものの、自身はファイナルステージ4試合中1試合にしか登板せず、10月22日の日本シリーズ第1戦(神宮)では1点ビハインド(8回裏)の登板で村上宗隆にソロ本塁打を浴びてシリーズ初失点を喫する苦しい展開。
その一方で、チームは1勝2敗(1分)で窮地に立たされていた10月27日の日本シリーズ第5戦(京セラドーム大阪)で、1点を勝ち越された6回表の途中から7回表の終了まで阿部、8回表に平野、9回表にワゲスパックを相次いで投入。3人の「日替わりクローザー」がいずれも無失点で凌いだ末に、京セラドーム大阪におけるシーズン最終戦を、吉田正尚の2点本塁打によるサヨナラ勝利で締めくくりました。
さらに、このシリーズで最後に登板した第6戦(10月29日)において、シリーズ初ホールドをマーク。翌30日の第7戦(いずれも神宮)では登板の機会がなかったものの、チームの勝利(通算成績4勝2敗1分)によって日本シリーズの制覇を初めて経験しました。
〇2023年には、4月28日の対ロッテ戦で、NPB/MLB公式戦通算800試合登板とシーズン初ホールドを記録しました。
5月14日の対ソフトバンク戦(いずれも京セラドーム大阪)で、シーズン2個目のホールドをマーク。このホールドによって、前年(2022年)の通算セーブ数に続いて、NPB/MLB公式戦通算のホールド数が200に到達しました。
NPB一軍公式戦での登板実績を持つ投手が、公式戦で200セーブと200ホールドを記録した事例は、NPBの公式戦にのみ登板した投手を含めても平野選手が初めてです。
その後は、クローザーとしてチームのパ・リーグ3連覇に大きく貢献し、3連覇決定後の10月2日には、京セラドーム大阪での対日本ハム戦でシーズン29個目のセーブをマーク。
このセーブによって、日本プロ野球名球会への入会条件であるNPB/MLB公式戦通算250セーブ(史上4人目の記録)を、歴代最年長の39歳6ヶ月で達成しました。
パ・リーグのチームに所属する選手の250セーブは史上初の快挙であり、オリックス球団への在籍中に名球会への入会資格を得た選手は、打者を含めても平野選手が初めてのことです。
〇「平野選手の4凡」
リリーフ投手としては、佐々木主浩、岩瀬仁紀、高津臣吾に続くプロ野球史上4人目となり、最年長39歳6ヶ月での大偉業の達成となりました。またオリックス球団としては、初の名球会入りになります。
絶対的守護神で、打たれても堂々としている、平野選手は世間にはそんな強いイメージを持たれていますが実際は違うといいます。「常に緊張しますよ。2軍の試合とかでも緊張しますし」。時には不安を感じながら、落ち込みながら、マウンドへ上がることもあるとのことです。
なお、平野投手が最終回のクローザーとして試合の締めに出てくるときにオリックスファンから「平野の4凡」もしくは「平野劇場」と声がかかることがあります。
これは平野さんの場合、9回の厳しい場面にリリーフで出てきても、試合をひっくり返されることはめったになく、走者を出してファンの心をハラハラさせながらも、最後はきっちりと抑えて味方に勝ちを呼び込むという最強のクローザーということで、「平野劇場」もしくは「平野の4凡(4者凡退)」という愛称?がついているのです。
そしてスタンドのファンたちはハラハラドキドキし、時には悲鳴を上げながら、「心臓がもたん」と書かれたタオルを掲げて最後のゲームセットを楽しんでいます。
これから40歳を迎えてもますます最強のストッパーとして活躍する平野佳寿選手の姿に期待したいものですね。